今回は、青崎有吾先生の『裏染天馬シリーズ』を解説していきます。
探偵役の天才かつアニメ好きの「裏染天馬」とワトスン役の「袴田柚乃」の高校生2人が活躍するミステリ小説のシリーズです。
長編では体育館や水族館など〜館とつく施設で起きる殺人事件を扱っており、犯人を当ててみろと言わんばかりの読者への挑戦が挿入されています。
一見ライトノベルかと思うような読みやすさや、裏染天馬のエキセントリックなキャラクターに反して、ゴリゴリの本格ミステリになっているところが特徴的なシリーズとなっています。
それでは、『裏染天馬シリーズ』について、以下のことを本記事では解説していきます。
この記事で解説する内容は下記となります。
- 『裏染天馬シリーズ』の作者は?
- 『裏染天馬シリーズ』の主な登場人物は?
- 『裏染天馬シリーズ』の既刊と読む順番は?
- 『裏染天馬シリーズ』の新刊はいつ?
それでは参りましょう!
『館四重奏シリーズ』の作者は?
作者は青崎有吾先生です。
明治大学のミステリ研究会出身で、作家を志望して最初はライトノベルの賞に応募していたそうです。
しかし、選評に「ライトノベルではなく、ミステリの方がいい」と書かれたことから(書いた人に大々的な賛辞を送りたいです)、ミステリの賞である鮎川哲也賞に後の裏染天馬シリーズの第一作となる『体育館の殺人』を応募し、見事受賞しました。
『裏染天馬シリーズ』以外にも、アニメ化された『アンデッドガール・マーダーファルス』シリーズなど、さまざまな著作があります。
また、X(旧Twitter)もされているようです。
https://twitter.com/AosakiYugo?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
『裏染天馬シリーズ』の主な登場人物は?
続いて、登場人物を紹介していきましょう。『裏染天馬シリーズ』の主な登場人物は2人です。
裏染天馬(うらぞめてんま)
裏染天馬はいわゆる探偵役です。
アニメ好きでなぜか学校に住んでいるという変わり者、しかも性格は相当捻くれています。
しかし、学校でNo.1と言われるほどの天才で、勉強している様子がないにも関わらず試験は毎回学年一位。
積極的に事件に関わろうとすることはないですが推理力は極めて高く、THE探偵といったキャラクターです。
学校に住んでいる理由や家族と確執があるらしいことなど謎も多いですが、作中ではいまだに明かされていません。
袴田柚乃(はかまだゆの)
袴田柚乃はいわゆるワトスン役です。
『体育館の殺人』で、自分が所属する卓球部の部長が殺人犯扱いされてしまったのを助けるために、裏染に協力を求めます。
(ややシスコン気味の)兄が捜査一課の刑事をしており、裏染と袴田兄妹で事件に当たるのは本作の風物詩です。
基本的には裏染に引っ張り回されているようでいて、最近は裏染の扱いが上手くなっているような気がします。
また、なぜか裏染の妹に好かれています。
『裏染天馬シリーズ』の既刊と読む順番は?
既刊は長編の『体育館の殺人』、『水族館の殺人』、『図書館の殺人』の3冊と、短編集の『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』の1冊からなっています
刊行順である『体育館の殺人』→『水族館の殺人』→『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』→『図書館の殺人』の順番で読むのがベターでしょう。
ただし、基本的に前の話を読んでいないとわからないという類のシリーズではないので、気になった本から読んでいくのもありだと思います。(個人的には体育館の殺人は1冊目に読んでいた方がいい気もしますが)
それでは、各巻についてざっくりと解説していきます。
1巻 体育館の殺人
第1巻は体育館の殺人です。
青崎先生のデビュー作にして、非常に完成度の高い一冊であると思います。
第22回鮎川哲也賞受賞作品です。
あらすじ
風ヶ丘高校の体育館で放送部の少年が刺殺されてしまいます。
外は激しい雨で、警察は足跡から体育館が密室状況であるとして、その体育館に被害者以外にいた唯一の人物である女子卓球部の部長を疑います。
卓球部員の袴田柚乃はその疑いを晴らすために学校で有名な天才である裏染天馬に事件解決を依頼します。
交渉の末事件解決を引き受けた裏染天馬は、警察をはるかに凌駕する推理能力を見せていき…
筆者の感想
とにかくスラスラと読めてしまう面白さがいいですね。
一本の傘から推理を進めていくというのも続きが非常に気になる上に、非常に読みやすい文章で読み始めてからはあっという間でした。
後書きでトリックにちょっと無理があるようなことが書いてありましたが、個人的にはそこまでは気にならなかったですね。
裏染天馬のキャラは変わり者が多いミステリ小説の探偵役の中でもだいぶエキセントリックでしたが、私はだいぶ好きです。シリーズを読む上でむしろ楽しみの1つです。
また、このシリーズ全般に言えることですが、犯人を無理に意外性のある人物にしようとしていないところがいいですね。
全員が怪しい度合いがフラットな容疑者の誰が犯人かを当てるという点で、むしろ意外性を強調してメタ読みしやすくなる犯人よりも読んでいて意外性がありました。
なお、体育館の殺人はkindle unlimitedで読み放題なので、もし加入されていない方は1ヶ月の無料期間を使ってタダで読むことをお勧めします。
\初回30日間無料トライアル実施中!/
2巻 水族館の殺人
第2巻は水族館の殺人です。
1巻の『体育館の殺人』が面白かったため、勢いで2巻の『水族館の殺人』も買って同じくすぐに読んでしまいました。
あらすじ
夏休み中、風ヶ丘高校新聞部のメンバーは館内で取材中に、サメが飼育員に食らいついているというショッキングな事件に遭遇。
殺人事件であると断定して捜査を進める警察ですが、容疑者11人全員にはアリバイがあり…
刑事の袴田は妹の柚乃を通じて、『体育館の殺人』で謎を解き明かした裏染天馬に再び殺人事件の解決を依頼することに。
筆者の感想
前作が密室殺人でしたが、今作ではアリバイ崩しでした。
容疑者が全員で11人いるということから、地道に消去法を用いて捜査をしていきます。
このように書くと退屈そうに思えるかもしれませんが、実際は裏染と柚乃の軽快なやりとりとミステリがうまく調和していて、『体育館の殺人』と同じようにスラスラと読むことができます。
舞台が水族館というのもいいですよね。アリバイ崩しの殺人現場がもし体育館だったら相当地味な絵面になっていたことは否めませんが、水族館というある意味非日常的な場所を事件の舞台に選ぶことでワクワクしながら読むことができました。
ちなみに筆者は頭が悪いので、解決編のロジックについていくのは精一杯でした…
3巻 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
こちらは短編集です。
全部で5つの作品が収録されています。
あらすじ
夏祭りのどの屋台で買い物をしても、お釣りが五十円玉ばかりだったのはなぜか?
学食の外に食べかけで放置された丼の意味は?
花瓶を学校で割ってしまった人物は?
などなど殺人事件が起きない短編集で、裏染天馬やその家族が謎をスパスパと解いていきます。
筆者の感想
読んでいるときには面白かった気がするのですが、正直なところ読み終わってしまうとあまりどのようなお話だったのか忘れてしまうのですよね。
これは、完全に私が悪いです。正直私の場合短編集はどうしても印象に残りづらいのですよね。
キャラの掘り下げという点では良かったので、ファンの方は必読の一冊です。
4巻 図書館の殺人
シリーズ第四作です。
ここまでくると館がつく施設も結構出揃ってきましたね。
次回作は公民館とかあたりでしょうか。
あらすじ
試験期間中に勉強をするため風ヶ丘図書館に向かった袴田柚乃は殺人事件のアドバイザーとして警察と一緒にいる裏染天馬を見つける。
閉館後の風ヶ丘図書館で大学生が本で撲殺されたとのこと、そして現場にはダイイングメッセージが残されていた。
裏染天馬は独自に調査を進めていくが…
筆者の感想
個人的にはシリーズの中でもこの作品が一番面白いと思います。
ダイイングメッセージというミステリにありがちでいて意外と扱われることが少ない題材をうまく物語に落とし込んだなという感じです。
いい意味でシリーズとして熟成されてきた感もあり、真相に迫っていく流れやそこで明かされる真相など、このシリーズを読み始めたのならぜひこの作品まで読んで欲しいです。
また、シリーズ全体の傾向として動機についてはそこまで深追いしないスタイルです。
個人的には納得感のいく動機がある方が好きなのですが、それを気にさせないくらいの完成度の高さでした。
ところで、この本のラストでは裏染天馬に関して最後の最後で爆弾を落としていきましたが、いまだに続きは出ていないのですよね。青崎先生を信じて待ちましょう。
『裏染天馬シリーズ』の最新刊はいつ発売?
2016年に図書館の殺人が刊行されて8年が経ちますが、最新刊の情報については2024年2月現在アナウンスはされていません。
作者のX(旧Twitter)によると、2020年に短編を書かれているようですが、単行本化されていないようです。
作者は他のシリーズを書かれているようなので、そちらが一区切りついたらまた再開することを期待して待ちましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
現代のミステリの中でも非常に好きなシリーズなのですが、8年間新刊が出ていないのはなかなか辛いですね。
確実に続きが出てくる終わり方を図書館の殺人でしているので、気長に待つより他ありません。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。
コメント