こんにちは、まだポケモンのモチーフになっていない世界最大のげっ歯類のカピバラです。
今回は、あえて読みにいく必要があるのかは疑問ですが、後味の悪い小説を集めてみました。
私の基準で小説としても十分面白く、それでも後味の悪さが優先して残った本を選びました。
ところで、後味の悪いという言い方もなんともいえないですよね。結構主観によるところが多いと思います。
例えば、湊かなえ先生の『告白』って後味が悪いと言われますが、個人的にはあまりそうとも思えないのですよね。
もちろんいやな気持ちになるっていうのは分かりますが、読み終わった後の感想が私の場合『面白かった!最後ちょっとだけスカッとした』で塗りつぶされていて、後味の悪さが優先されるわけではなかったです。
単純にエンタメとして楽しんでいました。
そういうわけで、私の選んだ本が皆様にとって後味が悪いかどうかは正直わかりません。
それでもよろしいという方は、ぜひともお付き合いいただけると嬉しいです。
後味の悪い小説7選
『樅ノ木は残った』 山本周五郎
超のつく名作です。
江戸時代に仙台藩伊達家で起きたお家騒動である「伊達騒動」を題材にしています。
この「伊達騒動」において史実では仙台藩の奉行であった原田甲斐という人物が、江戸幕府の将軍に次ぐ最高権力者の大老の邸宅で刃傷沙汰を起こし、仙台藩取り潰し寸前まで追い込んでしまいました。
結局、お取り潰しはまぬがれたものの、原田一族は男性は切腹ないし斬首、女性は他家にお預けという処分が下されました。
しかし、この小説では、この原田甲斐は優れた人格者の仙台藩の忠臣であり、この騒動は望んでおらず、むしろ仙台藩存続のために裏で尽くしていたというお話です。
仙台藩という巨大な『樅の木』を残すために、原田がした選択はあまりにも自身にとって残酷かつ過酷でした。
歴史小説の傑作で、私は普段歴史小説をあまり読まないにも拘らず、非常に面白かったです。でも後味は悪い、悪すぎる。
今はkindleで99円で買えるので、オススメです。間違いなく読む価値があります。
『蝿の王』 ゴールディング
皆さんは『十五少年漂流記』というお話をご存知でしょうか。
15人の少年が大人がいない状況で無人島に流れ着くも、協力して共同生活を始めます。
生活するための家を建て、皆で動物を仕留め手料理を作り、時にはケンカをしつつ(ドニファンとブリアンでしたっけ?)も最終的には皆で力を合わせてついには故郷に帰還する物語です。
小説としても面白く、読書感想文に書く本としては王道とも言えるのではないでしょうか。
そして、『蝿の王』は裏『十五少年漂流記』ともいうべきお話です。
少年たちが無人島に漂流する、ここまでの状況は同じです。
しかし、少年たちは喧嘩どころかできた派閥で完全に決別し、別行動を取るようになります。(生活拠点も含めて)
最初はお互い不干渉を貫こうとしていたのですが、ある人は相手の陣営のものを盗み、ある人は集団心理もあって狩猟を通してどんどん凶暴になっていき、ある人は片方の陣営からもう片方に移動したりなどどんどん不穏になっていきます。
そして、最終的には‥
性善説で書かれた『十語少年漂流記』に対して、『蝿の王』は徹底的に性悪説で書かれていますね。
主人公が少年なのに、全くもって容赦も救いもありませんでした。
『うつくしい子ども』 石田衣良
中学二年生の主人公は、弟が幼い女の子に性的悪戯をした挙句、殺害して捕まったというショッキングな経験をするところからストーリーは始まります。
普通の小説であれば主人公の弟は冤罪であり、少年が弟の無実を証明するために奔走する話になりそうです。
しかし、残念ながら弟がその罪を犯したということは事実で、主人公の学校に弟をけしかけた黒幕がいるということが明らかになります。
最終的に主人公は黒幕と対峙するのですが、その決着があまりにも…
正直言ってほとんど誰一人救いがなく、生々しい人間関係も合わせて後味が悪くなること請け合いです。
これほどタイトルが合わない小説もそうはないかもしれません。
『ふたり』 赤川次郎
ストレートに名作です。
主人公は姉妹で、優秀な姉がいたのですが、その姉は事故で高校生ながら亡くなってしまいます。
しかし、なぜか突然主人公の心の中に姉の声が聞こえてきます。姉は実態はないですが、生前の記憶を元に主人公に話しかけることができるようです。
そして、姉は姉らしく主人公のことを励ましたりアドバイスをしながら奇妙ながらも暖かい生活を送っていきます。
しかし、両親の中が徐々に悪くなっていき、ついには主人公の前で大喧嘩をするまでになってしまいます。
そして、家庭崩壊の危機にパニックになっている主人公に対して、姉は宥めようとしますが、主人公は姉に対して思わず言ってはいけないことを言ってしまい‥
感動的なラストと、後味の悪さが両立する最高の作品でした。
『ボトルネック』 米澤穂信
1言でいうと、自身の存在を世界に否定され続ける少年のお話です。
設定からしてえげつなく、あまり恵まれていない環境の主人公は並行世界に突如移動してしまうのですが、その並行世界はほとんど自分の知っている世界と存在している人は同じでした。
しかし、自分の家に行くと自分ではなく存在しないはずの姉がいます。そして、自分が産まれずに姉が産まれていたら、多くの人が幸せになっていたという現実を叩きつけられます。
元の世界へ戻った主人公は、当たり前ですが消沈し、自分の生き死にを他人に決めてほしいと願います。
そこに届いたとあるメールをみて、主人公は笑ってしまうのでした。
…米澤先生はブラックな作風の本が多いですが、この本がダントツで黒いです。設定からして主人公を苦しめるために入念に準備されています。
別の記事でも書いた気がしますが、タイトルが秀逸。
『模倣犯』 宮部みゆき
ものすごく長い上に、鬱々とした描写が続きます。(面白いのが救いです)
女性の連続誘拐殺人事件を扱っており、『犯人』、『犯人の知人』、『被害者家族』、『警察』などの様々な視点で物語が進んでいきます。
その圧倒的な構成と、先の読めない展開、『模倣犯』の言葉の真意など、どんどん物語に引き込まれていきます。
しかし、このお話の本質はやはりその後味の悪さでしょう。
そもそも犯人はなんのためにこの事件を起こしたのか、最終的に犯人はどうなるのか、結論としてはまあ後味は悪いですね。
被害者遺族の最後の嘆きが印象的です。
『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』 桜庭一樹
これほどまでに陰鬱としたライトノベルはそうそう無いでしょう。
有名な男性歌手の娘である『海野藻屑』が冒頭で殺害されたことが明かされ、その後に『海野藻屑』が何者であったかを追っていく構成になっています。
女子中学生の『山田なぎさ』の家はお金がなく、本人は高校進学を諦め、本気で地元にある自衛隊に入ろうと考えています。
そして、転校してきたばかりの海野藻屑、当初は不思議ちゃんかつ親がお金持ちということもあり、自分とは違う人だと考えていました。
しかし、徐々に共通点が少ないながらも仲良くなっていく2人、この小説で唯一の癒しです。
実は、海野藻屑はDVを父親から受けており、片耳が聞こえず、歩行も若干不自由しているほどです。そして、DVが悪化した挙句最後は…
海野藻屑は辛い現実から逃れるために、空想などの世界に生きていた節があります。しかし、山田なぎさはそのような『砂糖菓子の弾丸』では、現実を変えることはできないと改めて思うのでした。
あとがき
うーん、筆者はときどきくらい話を読むのは好きなのですが、今回挙げた話を連続で読んだら病んでしまうかもしれません。
それでも、物語の世界だからこそ楽しめる部分はあると思います。
気になった本はぜひ手に取ってみてください。それと確実に明るい気持ちになれる本をセットで準備することを忘れずにお願いします。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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